平日デスクワークでも、週末のスポーツを長く楽しむには?理学療法士が伝える「身体の切り替え方」

平日は朝から夕方までパソコンに向かい、週末はフットサルやランニング、テニスで思いきり身体を動かす。そんな生活を送っている方は少なくありません。
週末に身体を動かす習慣は、それだけで大きな財産です。一方で、「久しぶりに動いたら、ふくらはぎを痛めた」「週明けまで腰の張りが抜けない」といった声を聞くことも多くあります。
今回は、週末のスポーツをケガなく長く楽しむために、平日デスクワークの方に知っておいていただきたいことを、理学療法士の立場からお伝えします。
1. 週末だけの運動にも、しっかり意味があります
「平日に運動できていないのに、週末だけ動いても意味がないのでは」と感じる方もいるかもしれません。でも、そんなことはありません。
イギリスで約6万人の成人を追跡した研究では、運動を週1〜2回にまとめて行う人でも、ほとんど運動しない人と比べて、死亡リスクが低いことが報告されています。アメリカの約35万人を対象にした研究でも、運動の量が同じであれば、まとめて行っても分けて行っても、効果に大きな差はみられなかったとされています。
(出典:O'Donovan G, et al. JAMA Internal Medicine. 2017/dos Santos M, et al. JAMA Internal Medicine. 2022)
忙しい平日の中で、週末に運動の時間をつくっていること自体が、大切にしたい習慣です。
どのくらい動けばよいのか、厚生労働省の目安
ちなみに、ここで紹介した研究の対象は、中くらいの強度の運動を週150分程度で(世界保健機関(WHO)が推奨する量)行っている人たちでした。日本でも、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で、大人の目安として次のような内容が示されています。
歩くこと、またはそれと同じくらいの強さの活動を、1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)
息が弾み、汗をかく程度の運動を、週60分以上
筋力トレーニングを、週2〜3日
座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する
ご自身の平日と週末が、この目安と比べてどのくらいかを、一度思い浮かべてみてください。
大切なのは、その習慣をケガで途切れさせないことです。そのために知っておきたいのが、平日と週末の身体の「ギャップ」です。
2. ケガにつながりやすいのは、平日と週末の「ギャップ」
週末のスポーツそのものが悪いわけではありません。ケガにつながりやすいのは、平日の身体の状態と、週末に求められる動きとの差が大きいときです。
平日に座り続けると、身体はこう変わりやすい
長時間座っていると、股関節の前側や太ももの裏、胸の前の筋肉が縮こまった状態が続き、硬くなりやすくなります。背骨も同じ姿勢のままほとんど動かないため、反らす・ひねるといった動きが出にくくなります。背骨は上半身と下半身をつなぐ大切な部分なので、その動きが硬くなると、姿勢だけでなく、腕と脚、上半身と下半身の動きの連動にも影響します。また、座っている間はお尻の筋肉をほとんど使わないため、立って動くときにお尻の筋肉が働きにくくなることがあります。
週末に求められる動きは、その反対
一方で、スポーツでは、股関節を大きく動かし、お尻や太ももの筋肉で身体を支えながら、背骨をしなやかに使って、ダッシュやジャンプ、方向転換、キックやスイングをします。平日に硬くなった筋肉や背骨、働きにくくなったお尻の筋肉のまま、いきなり全力で動くと、動く範囲の狭さや筋肉の弱さを、ほかの部分がかばう動きが生まれやすくなります。たとえば、股関節が十分に動かない分を腰や足関節で補ったり、お尻の筋肉の代わりに太ももの裏が頑張りすぎたりするような動きです。こうしたかばう動きが続くと、負担が特定の場所に集中し、太ももの裏やふくらはぎの肉離れ、足首のねんざ、膝や腰の痛みといった症状につながりやすくなります。
「昔の感覚」で動いてしまうことも
学生時代にスポーツをしていた方ほど、身体が覚えている「昔の感覚」のまま動いてしまうことがあります。頭では動けるつもりでも、今の身体がついてこない。そのズレも、ケガのきっかけになりやすいポイントです。
ギャップを数字で確かめてみる
「ギャップが大きい」と言われても、どのくらいなら大きいのかは分かりにくいものです。目安として、次の3つを確かめてみてください。
確かめること | 目安 | ギャップが大きいサイン |
平日の1日の歩数 | 約8,000歩以上 | 平日は数千歩にとどまる日が多い |
平日の運動 | 息が弾む程度の運動を週60分以上 | 平日はほとんど運動していない |
週末の運動の強さ | 前の数週間と比べて、急に上げすぎない | 久しぶりなのに、最初から全力で動く |
3つ目の「強さ」は、見落とされやすいポイントです。とはいえ、週末のスポーツは、仲間と一緒に過ごす大切な時間でもあります。久しぶりだからといって、自分だけ早めに切り上げるのは現実的ではない、という方も多いと思います。また、これまでの運動経験や得意な競技によっては、しばらく休んでいても身体が動きを覚えていて、ゼロからのスタートではないこともあります。
そこでおすすめしたいのが、参加する時間はそのままに、動きの強さを調整することです。たとえば、最初のうちは全力のダッシュや急な切り返しを控えめにする、交代や休憩をいつもより多めに取る、といった工夫です。自分の身体の反応を確かめながら、数週間かけて本来の強さに戻していくと安心です。
もちろん、実際に試合形式で動いてみて初めて分かることもあります。大人のスポーツは、今の自分の身体と向き合う機会でもあります。ケガにつながるほどの強さで最初から飛ばすことは避けつつ、動いた後に「どの動きで張りや怖さを感じたか」「翌日どこに疲れが残ったか」を振り返ってみてください。その積み重ねが、自分の身体の状態をつかむことにつながります。
強度の低い運動なら安心、というわけではありません
一方で、「中くらいの強度より軽い運動なら、ギャップは小さいからケガはしない」というわけではありません。ウォーキングや軽いジョギングのような強度の低い運動でも、急に距離や時間を増やせば、足の裏やすね、膝などに負担が積み重なることがあります。また、平日に座り続けて硬くなった身体は、軽い動きでも思わぬところに負担がかかることがあります。
運動の強さにかかわらず、「いつもより急に増やしていないか」「今の身体の状態に合っているか」を意識しておくことが大切です。
3. 自分の身体の状態を確かめてみましょう
週末のスポーツの前に、次の3つを確かめてみてください。いずれも、痛みのない範囲で、ゆっくり行ってください。
股関節の前側の硬さ
:片膝立ちになり、骨盤を立てたまま、体重を少し前に移します。前に出していない側の脚の付け根(股関節の前側)が強く突っ張る場合は、硬くなっているサインかもしれません。
太ももの裏の硬さ
:膝を伸ばしたまま立って前屈します。以前より手が床から遠くなっている場合は、太ももの裏が硬くなっている可能性があります。
お尻の筋肉の働き
:鏡の前で片脚立ちをします。立っている脚と反対側の骨盤が下がったり、膝が内側に入ったりする場合は、お尻の筋肉がうまく働いていないかもしれません。
4. 平日にできる「週末への準備」
平日の過ごし方を少し変えるだけでも、週末の身体の動きやすさは変わってきます。
仕事中も、自分の身体に目を向ける
:ふとしたときに「今、どんな姿勢で座っているか」「どこが張っているか」に気づくことが、すべての出発点です。週末にスポーツをしているときと同じように、平日も今の自分の身体の状態を意識してみてください。
1時間に1回、スクワットの要領で立ち上がる
:椅子から立つときに、足を肩幅に開き、背筋を伸ばしたまま股関節から上体を前に倒して、お尻と太ももの力で立ち上がります。膝がつま先より内側に入らないように意識してください。立ち上がったら、飲み物を取りに行く、少しその場で歩くといった程度で構いません。座り続ける時間を区切りながら、座っている間に働きにくくなったお尻の筋肉を使うことが、週末に向けた第一歩です。
座ったままできる、お尻と股関節の運動
:椅子に座ったまま、片方の足首を反対側の膝に乗せ、背筋を伸ばして上体を少し前に倒すと、お尻の筋肉が伸びます。仕事の合間に左右30秒ずつ行うだけでも違います。
作業環境を少しだけ整える
:ノートパソコンを台に乗せて画面を目の高さに近づける、足の裏全体が床につく高さに椅子を合わせる。座っている間の負担が減ると、身体の固まり方も変わってきます。
週の半ばに一度、軽く動く
:週末だけでなく、水曜日あたりに10〜15分歩く、軽くジョギングするなど、身体に「動く日」を思い出させておくと、週末との差が小さくなります。
5. 週末当日のポイント
いつもより長めにウォームアップを:平日に座っていた時間が長かった週ほど、身体が温まるまでに時間がかかります。最初は軽いジョギングや、脚を前後・左右に振る動きなど、身体を動かしながら温めるウォームアップがおすすめです。
最初の15分は「7割の力」で:いきなり全力ではなく、少しずつ強度を上げていきましょう。
翌日の身体の声を聞く:運動の翌日に、いつもと違う痛みや腫れがないかを確認してください。同じ場所の痛みが続く場合は、無理をせず医療機関に相談しましょう。
6. TAYO WORKSができること
TAYO WORKSでは、理学療法士がご自宅に伺います。そのため、普段作業している机や椅子といった「平日の環境」と、実際にスポーツの動きをしたときの「週末の身体の使い方」を、同じ理学療法士が一緒に見ることができます。
動作分析にもとづいて、お尻の筋肉が働きにくくなっていないか、硬くなっている場所はどこかを確かめ、取り組んでいる競技に合わせて、平日にできる準備や週末のウォームアップを一緒に考えていきます。
週末の楽しみを、これから先も長く続けていくためのお手伝いができればと思っています。
よくある質問
Q. 平日はまったく運動する時間がありません。週末だけでも続ける意味はありますか?
A. はい、あります。週末だけでも身体を動かす習慣には、意味があります。そのうえで、平日に座り続ける時間をこまめに区切る、仕事の合間に少しだけ身体を伸ばすといった工夫を加えると、週末の動きやすさが変わってきます。
Q. 運動の前のストレッチは、何をすればいいですか?
A. 運動の前は、じっと伸ばし続けるストレッチよりも、脚を振る、身体をひねるなど、動きながら筋肉を温める方法がおすすめです。じっくり伸ばすストレッチは、運動の後や、平日の仕事の合間に取り入れるとよいでしょう。
Q. 学生時代以来、久しぶりにスポーツを再開します。相談してもいいですか?
A. もちろんです。久しぶりの再開こそ、今の身体の状態を知っておくことが大切です。運動経験や目標に合わせて、無理のない進め方を一緒に考えます。
まとめ
週末に身体を動かす習慣は、それだけで大きな価値があります。ケガにつながりやすいのは、週末の運動そのものではなく、平日に座り続けた身体と、週末に求められる動きとの「ギャップ」です。
平日に少しだけ準備をして、週末は身体を温めてから少しずつ強度を上げていく。そして、スポーツをしているときも、仕事をしているときも、「今の自分の身体はどんな状態か」に目を向けること。それが、週末のスポーツを長く楽しむための土台になります。
デスクワークによる腰の負担については、デスクワークの腰痛にクッションは効果的?理学療法士が教える選び方と正しい使い方、スポーツ中のケガ予防の基本については、スポーツ中のケガを防ぎたいなら、まず知っておきたいことでも紹介しています。
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