バスケの着地で膝が内側に入る「ニーイン」、パフォーマンスにも影響しています

「ジャンプの後、俊敏に動き出せない感じがする」「ジャンプの着地で、なんとなくグラつく」——バスケットボールをしている学生の方から、こうした声を伺うことがあります。
こうした感覚の背景には、着地の際に膝が内側に入る「ニーイン」と呼ばれる動きが関係していることがあります。ただ、選手自身がこの動きを意識していることはほとんどなく、「膝が内側に入っている」という自覚がないまま、ジャンプ力や切り返しの速さといったパフォーマンスの面だけに違和感を覚えているケースが多いようです。もちろん、ケガのリスクにも関わる動きです。
今回は、バスケットボールの着地動作における「ニーイン」について、理学療法士の視点からご紹介します。
1.「ニーイン」とは、つま先より膝が内側に入ってしまう動きのこと
ニーインとは、膝を曲げる動作全般において、つま先の向きよりも膝の向きが内側に入ってしまう動きのことです。着地の瞬間に限らず、スクワットでしゃがみこむ動作や、ステップを踏む場面など、膝を曲げるあらゆる動きで起こりえます。
バスケットボールはジャンプの踏み切り、着地、切り返し、ストップ動作など、膝を曲げる場面を繰り返す競技です。着地のときだけでなく、ジャンプする瞬間の踏み切りでも同じように膝が内側に入ることがあり、着地や切り返しのタイミングとあわせてニーインが起こりやすいスポーツのひとつだと言えます。
練習中や試合中、毎回大きくニーインが起きているわけではなくても、疲労がたまってくる終盤や、とっさの切り返しの場面で膝が内側に入りやすくなる、というケースは少なくありません。
2.なぜ気にする必要があるのか:ケガとパフォーマンス、両方に関わります
ケガのリスクについて
着地やジャンプの踏み切りの瞬間に膝が内側に入ると、膝にかかる力の向きが本来のまっすぐな軸からずれます。このずれは、膝の中で重要な役割を果たす前十字靭帯(ACL)だけでなく、膝の内側・外側を支える側副靭帯や、膝の間でクッションの役割を果たす半月板にも負担をかけます。
実際、前十字靭帯を損傷して手術を受けた後のリハビリでは、ニーインは再断裂のリスクファクターとして特に注意される禁忌動作のひとつとされています。
もちろん、負担がかかることと実際にケガをするかどうかは別の話で、ニーインがあれば必ずこれらを損傷するというわけではありませんが、着地や踏み切りのたびに靭帯や半月板へ負担がかかっていること自体は間違いありません。
パフォーマンスへの影響について
見落とされがちですが、ニーインはパフォーマンス面にも関わります。ジャンプの踏み切りや着地は、地面からの反力をうまく受け止め、次の動き(ジャンプ、切り返し、ダッシュ)へと力を伝える場面でもあります。
着地の際に膝が内側に入ると、その力がまっすぐ伝わりにくくなり、いわば「力が逃げる」状態になりやすいと考えられます。ジャンプ力が思うように出ない、切り返しのスピードが上がらない、ジャンプシュートやスリーポイントの軸がぶれて入りにくい、といった感覚の背景に、着地や踏み切りの膝の使い方が関係していることもあります。
ジャンパー膝・シンスプリントとの関係について
バスケットボールでよく聞かれるジャンパー膝(膝蓋腱炎)やシンスプリントは、ニーインそのものが直接の引き金というわけではありません。
ただ、これらの症状が出やすい方は、体幹や下肢の使い方、柔軟性の低下といった土台の部分に課題を抱えていることが多く、その同じ土台がニーインにもつながりやすいというのが現場での実感です。
結局のところ、ACLへの負担も、ジャンパー膝やシンスプリントも、根っこをたどると「体幹・下肢の正しい身体の使い方」という同じポイントに行き着くことが多いように感じます。
3.ニーインにつながりやすい、身体の使い方のポイント
ニーインが起きやすくなる背景には、いくつかの共通したポイントがあります。
股関節まわりの筋力・使い方:
股関節を外側に開く力(外転・外旋筋群)の弱さもさることながら、お尻の筋肉(大殿筋など)を使って地面をまっすぐ下に踏み込む力をうまく発揮できていないことも、ニーインに関係していると考えられます。着地は必ずしも真上から真下に降りるとは限らず、そのつど左右や回旋方向へのブレも生じるため、大腿部をブレさせずに支える調整力が求められます。この調整がうまくいかないと、膝が内側に入りやすくなります。
体幹の安定性:
体幹が不安定だと、着地の衝撃を受け止める際に骨盤がぐらつきやすくなります。股関節まわりの筋肉の多くは骨盤を起点として働いているため、骨盤が安定しない状態ではその筋肉もうまく力を発揮しにくくなり、結果として膝にも影響が及びやすくなります。
柔軟性の低下:
骨盤周囲(特に脊柱起立筋)や殿筋群、ハムストリングスなど、骨盤・股関節・膝関節まわりの筋肉の柔軟性が低下していると、着地の衝撃を十分に吸収できず、膝がその分の負担を引き受けることがあります。
これらは一つだけが原因になっているというより、いくつかの要素が組み合わさってニーインにつながっていることがほとんどです。
4.自分でできるセルフチェック

本格的な動作分析の前に、練習の中でご自身でも確認できるポイントをいくつかご紹介します。
ジャンプの踏み切りと着地の瞬間、それぞれで膝がつま先より内側に入っていないか、味方やチームメイトにスマートフォンで正面から撮影してもらい、後から確認してみましょう。
片足でのジャンプ着地を行い、左右それぞれで膝がつま先より内側に入っていないか確認してみましょう。片脚での着地は両脚での着地よりもニーインが出やすい動作なので、チェックにおすすめです。
練習の終盤、疲れてきたタイミングで着地の感覚がいつもと変わっていないか意識してみましょう。疲労が溜まると、序盤にはなかったニーインが出やすくなることがあります。
なお、しゃがみ込み動作(スクワット)での膝の入り方の基本的なチェック方法やトレーニングのキューについては、スポーツ中のケガを防ぎたいなら、まず知っておきたいことでも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
いずれも目安程度のセルフチェックですが、気になる点があれば、フォームを見直すきっかけにしてみてください。ただし、股関節の使い方・体幹の安定性・柔軟性といった要素は互いに影響し合っているため、どこか一つを直せば良くなるとは限りません。根本的な改善には、専門的な動作分析が近道になることもあります。
5.理学療法士による動作分析という選択肢
TAYO WORKSでは、理学療法士が動作分析に基づいた個別指導を行っています。フォームの見た目だけでなく、その動作を支える柔軟性や筋力のバランスまで含めて評価するため、「なぜニーインが起きているのか」という原因に近づくことができます。
現在、國學院久我山高等学校バスケットボール部にも継続的にサポートに伺っており、こうした現場での継続的な関わりの中で、一人ひとりの動作に合わせた評価・指導を行っています。
動作分析全般の考え方については、学生アスリートのパフォーマンスが伸び悩むのはなぜ?、訪問パーソナルトレーニング全般の流れや料金については、訪問パーソナルトレーニングのすべてにまとめています。
6.よくある質問
Q. 痛みがあるわけではないのですが、相談してもいいですか?
A. もちろんです。痛みが出る前の段階でご相談いただく方が、動きのクセを見直しやすいこともあります。気になる段階で早めにご相談ください。
Q. 筋トレをすればニーインは直りますか?
A. 筋力トレーニングは、ニーイン対策として欠かせない要素のひとつです。ただし、重要なのは「やるかどうか」よりも「どうやるか」です。ニーインにつながる部分を意識せずにトレーニングを行っても、期待するような変化につながりにくいことがあります。ご自身のニーインの背景にどの要素が関わっているかを踏まえたうえで、正しいやり方で取り組むことをおすすめします。
Q. テーピングやサポーターで対応できますか?
A. テーピングやサポーターは、一時的に膝の動きをサポートしたり、意識づけの助けになったりすることはあります。ただし、それだけで根本的な動きのクセが変わるわけではないため、動作の改善とあわせて活用いただくのがおすすめです。
Q. 中学生ですが、高校でも継続してバスケを続けたいと考えています。今のうちにできることはありますか?
A. 中学から高校に上がるタイミングは、練習量やプレーの強度が上がりやすく、これまでは気にならなかった動きのクセが負担として表れやすくなる節目でもあります。今のうちに着地や踏み切りの動きを見直しておくことは、目の前のケガの予防だけでなく、これから先も高いレベルでプレーを続けていくための土台づくりにもなります。
動作のクセとパフォーマンスの関係については、学生アスリートのパフォーマンスが伸び悩むのはなぜ?理学療法士が行う「動作分析」でわかることもあわせてご覧ください。
7.まとめ
バスケットボールの着地で膝が内側に入る「ニーイン」は、前十字靭帯(ACL)への負担といったケガのリスクだけでなく、ジャンプ力や切り返しの速さ、シュートの精度といったパフォーマンスにも関わっています。股関節の使い方、体幹の安定性、柔軟性など、いくつかの要素が組み合わさって起きていることがほとんどです。中学・高校とそれ以降、競技を続けていく中で、練習の強度が上がるタイミングは、こうした動きのクセが表面化しやすい節目でもあります。
セルフチェックで気になる点が見つかった方や、動作を専門的に確認してみたいという方は、公式LINEからお気軽にお問い合わせください。





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